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土に呟きながら・慣行農で生活をしながら、自然農を知り、それを実験していた百姓の物語。 (全35話)
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生まれるということ・SLEに病んだ妻の出産に関する物語。 (全30話)
小さな記憶・幼い頃、他人の家で育てられた謎の記憶。 (全24話)
親父になる 第一部・26歳で子供を授かり、本当の意味での親父になるまでの物語。 第一部。(全25話)
親父になる 第二部・26歳で息子を授かり、本当の意味での親父になるまでの物語。 第二部。(全25話)
親父になる 第三部・26歳で子供を授かり、本当の意味での親父になるまでの物語。新連載(連載中)

2015年6月27日土曜日

1話 行き先

親父になる

NO.1・


一人親方になって、俺の仕事も見つけなきゃならないけど、若い衆の気持ちも考えてやらなきゃならなかったんだ。
俺、急に辞めちゃったから、奴らに説明もしてなかったしね。
みんなをウチに呼んだんだ。

久しぶりに若い衆が集まったんで、大樹は大喜びしてたよ。
「大樹、チン毛は生えたか?」
「え?ちょっと」
「ちょっと見ないうちに、背が伸びたな」
「でも、学校じゃ小さい方だよ」
話は尽きないよね。
「大樹、悪いけど仕事の話をするからな。ここにいてもいいけど、邪魔はするなよ」
「うん、とーちゃん」
まだまだ素直な頃だったな。

「さて、みんな、俺の話は聞いてるな」
「はい」
「ま、そんなことで俺は会社を辞めて、一人親方になることにしたんだ」
「はい」
「でな、できればみんなを引き連れて仕事をしたいんだけどな、俺にはまだその基盤がないんだ」
「はい」
「でな、お前らが会社に残るっていうなら、何も言わない。それでいいと思うんだ。でも、あの会社に残るのが嫌なら、他の会社を紹介するぞ。何も心配いらないからな」
「はい」

さすがに、みんな真剣な顔で黙っちゃったよ。
若い衆も悩んでるんだろうな。
そんな空気がひしひしと伝わってきたよ。

「あの、俺、まだ自信がないっす」
「自信って?」
「他の会社に行く自信がないっす」
「そうか、じゃ、あの会社に残るか?」
「はい。すんません」
「なに、謝るこたあない。あそこでがんばれ」
「はい」

「俺、兄貴のとこ行きます」
「あ、お前は兄貴も電気屋に勤めてたな」
「はい。ツテを頼るようでしゃくなんっすけど、この会社よりはいいかなって」
「ツテを頼ったって、お前がしっかり仕事をすればいいことだ。お前ならできるぞ」
「ありがとうっす」

「俺、ヤマの彼女の会社に行けないかなあ」
「あ、ヤマちゃんの彼女の家も電気屋だもんな。ヤマちゃん、どうだ?彼女の親父さんに話せるか?」
「そりゃいいっすけど」
「けど何だ?」
「ケンジ、紹介はするけど、俺の顔に泥をぬるなよな」
「ああ、わかってるよ」
「じゃ、紹介するよ」

最後まで考えてたのが、ヤマちゃんだったよ。
難しい顔をしてたな。

「ヤマちゃんはどうするんだ?」
「俺っすか」
「ヤマちゃんも彼女の会社に行くか?」
「いや、それだけは嫌っす」
「そうか、じゃ、どこか紹介するか?」
「いや、齊藤さん、俺、独立できないっすかね」
「え?独立?」
「はい。俺、高圧は持ってないし、馬鹿だから取れないっすけど、一般住宅で食っていけないっすかねえ」
「そりゃあ高圧を持ってなくても、工務店を何軒も持って食ってる人もいるぞ」
「ですよねえ。だから、俺の腕で独立できないっすかねえ」
「ヤマちゃん、俺も、ぺそに言われたんだけどな、覚悟があればできるぞ。ヤマちゃんの腕なら」
「そうっすか?」
「自信を持て。俺は、みんなを甘やかして仕事をしたつもりはないぞ。それに付いてきたお前らなんだから、大丈夫だ」
「そうっすか。じゃ、俺は親父と相談して独立するっす」
「そうか、ヤマちゃん。頑張れよ」
「はい」
さすがに今日は「うい~っす」の返事じゃなかったな。

こうして、みんな、それぞれの道を歩くことになったんだ。
今までの感謝を込めて、みんなで乾杯したっけ。

考え込む奴も、笑う奴も、泣き出す奴もいたっけなあ。

さて、俺もうかうかしてられないぞ。
明日の飯代を稼がにゃあな。


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これまでの読み物
「親父になる 第一部」
「生まれるということ」 「土に呟きながら」 「右手を眺めて」 「小さな記憶」

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